はじめに
長い休みのあと、仕事へ戻るときに少し落ち着かないことがある。
何を途中までやっていたか。 誰から返事が来ていたか。 どこまで確認したか。 何をあとでやろうとしていたか。
休みに入る前には分かっていたはずなのに、数日離れるだけで、仕事の位置が少し遠くなる。
すると休み明けの朝には、
「まず全部思い出さなければ」
という感覚になりやすい。
メールを読み直す。 メモを探す。 フォルダを開く。 予定表を見る。 休み前の状態を頭の中でもう一度作ろうとする。
しかし、仕事を再開するために、本当に休み前のことを全部思い出す必要があるだろうか。
多くの事務処理では、そこまで必要ない。
大切なのは、過去を完全に復元することではなく、
いまどこにいて、次に何を確認すればよいかが分かること
である。
休みの前と後では、仕事の状態が少し違う
8月は、会社ごとに時間の進み方がずれやすい。
自社が休みでも、取引先は動いていることがある。
こちらが通常営業でも、相手の担当者が休んでいることがある。
連絡を送っても返事が来ない。
返事が来ると思っていたものが数日あとになる。
逆に、自分が休んでいるあいだに新しい連絡が届くこともある。
そのため、休み明けの仕事は単純に、
休み前の状態
↓
そのまま再開
とはならない。
実際には、
休み前の状態
↓
中断
↓
そのあいだに起きた変化
↓
現在の状態
になっている。
ここで必要なのは、休み前の状態を正確に思い出すことより、
中断しているあいだに何が変わったかを確認すること
である。
「記憶」より「現在地点」を残す
仕事をしている最中は、自分の頭の中に多くの情報が入っている。
この請求書は確認待ち。
この取引先には昨日連絡した。
この数字はまだ仮。
この処理は来週もう一度見る。
毎日続けて仕事をしているあいだは、それらを自然に覚えていられる。
しかし休みが入ると、その連続性が一度切れる。
これは記憶力の問題ではない。
仕事の現在地点が、頭の中だけに置かれていたということである。
だから休み前に残しておくと役に立つのは、長い説明よりも、
ここまで終わった
次はここを見る
これは返事待ち
これは未確定
といった小さな現在地点である。
一行でもよい。
付箋でもよい。
一覧表でもよい。
休み前の自分から休み明けの自分へ、小さく引き継いでおく。
そうしておけば、未来の自分が過去の自分の頭の中を再現しなくても、仕事へ戻りやすくなる。
前月の資料を全部覚えている人はいない
これは月次業務でも同じである。
給与計算をするとき、前月の処理内容をすべて記憶している必要はない。
請求書を作るときも、前回入力した数字を全部覚えている必要はない。
会計処理でも同じである。
前回の状態が残っていれば、それを基準に今回の差分を見ることができる。
前回の状態
↓
今回変わったところ
↓
今回の処理
という形で仕事を進められる。
これは単なる省力化ではない。
毎回ゼロから思い出さなくても、同じ仕事へ戻れるようにする仕組みでもある。
前月のデータが残っている。
前回の判断理由が残っている。
未処理のものが分かる。
次に確認する場所が分かる。
反復業務では、こうした小さな手掛かりが次の仕事を支えている。
休み明けは、確認する順番を作る
休み明けにやることが多いと、全部を一度に確認したくなる。
メール。
チャット。
郵便。
予定。
未処理。
取引先からの連絡。
社内連絡。
もちろん、必要なものはいずれ確認しなければならない。
ただし、すべてを同じ優先度で一度に見始めると、かえって現在地点が分かりにくくなることがある。
そこで最初は、
- 中断前に未完了だったもの
- 返事待ちだったもの
- 休み中に期限が来たもの
- 休み中に届いた重要な連絡
- 今日動かす必要があるもの
から確認する。
全部を把握する
↓
仕事を始める
ではなく、
現在地点を確認する
↓
必要な順番を作る
↓
仕事を再開する
↓
必要になった情報を確認する
という流れである。
全部を見ることと、全部を最初に見ることは違う。
記録は、多ければよいわけではない
仕事を引き継ぐときや休みに入る前には、記録をきちんと残そうと考える。
それ自体は大切である。
ただ、記録を完璧にしようとすると、それを作ること自体が大きな仕事になってしまうこともある。
重要なのは記録量を増やすことではなく、
あとから必要な情報へ戻れる状態にしておくこと
である。
たとえば、
○○社
見積送付済み
返事待ち
9月2日に再確認
これだけでも、数日後の自分には十分役に立つ。
反対に、たくさん記録があっても、
どこまで終わったのか。
何が未確定なのか。
次に何を見るのか。
が分からなければ、再開には時間がかかる。
記録は詳しさを競うためのものではない。
仕事へ戻るための手掛かりとして使えることが大切である。
「元に戻す」と「再開する」は少し違う
休み明けには、つい通常運転へ戻そうとする。
しかし、休みのあいだにも現実は少しずつ動いている。
担当者が変わった。
期限が変わった。
相手の予定がずれた。
優先順位が変わった。
新しい連絡が来た。
そのため、仕事を再開するということは、
休み前の状態を
そのまま復元する
ことではない。
むしろ、
休み前の状態を基準にする
↓
現在との差分を見る
↓
今の条件で再開する
ことである。
過去へ戻る必要はない。
過去を基準に、現在へ戻ればよい。
今日の終わりに「次はここから」を残す
休み明けの話は、長期休暇だけの話ではない。
一日の終わりにも小さな中断がある。
今日の自分と、明日の自分。
金曜日の自分と、月曜日の自分。
月末の自分と、翌月の自分。
担当者が変わる前と後。
どれも、同じ仕事がずっと途切れず続いているわけではない。
小さな中断と再開を何度も繰り返している。
だから仕事を続けやすくするには、全部を覚えておこうとするより、
戻る場所を残しておく
方が役に立つことがある。
今日の仕事の最後に、
「次はここから」
と一行残す。
未確定なら、
「未確定」
と残す。
返事待ちなら、
「返事待ち」
と残す。
それだけでも、未来の自分が過去を全部思い出す必要は少なくなる。
仕事の再開に必要なのは、休み前の自分を完全に取り戻すことではない。
まず現在地点を見つける。
そこから、休んでいるあいだに変わったことを確認する。
そして、今の条件で仕事を始め直す。
休み明けの最初の仕事は、全部を思い出すことではない。
「次はここから」と言える場所を見つけることである。